"せえの” で 余白の空

ついばんだ 桜 1つ

淡い景色の中で

父方のお墓がある場所は小高い丘の天辺で

遠くに横浜の海とベイブリッジが見える事を知ったのは

何十年振りに訪れた大人になってからだった。

その日は8月にしてはとても涼しい日で

喪服を着ていても不思議と暑さは苦じゃなかった事を今でも鮮明に思い出す。

 

この場所の一番古い記憶は4.5歳辺り

お盆のお墓参りに家族全員で来た時のもの。

丘の上にある所為か、太陽を遮るものは何もなく

照らしつける日差しが5メートル先をゆらゆらと燻らせていた。

同じ様なお墓が沢山並びまだ字も読めない私は

太陽光で白飛びする景色の中、前を進む父の後ろ姿を必死に追いかけていた様に思う。

 

毎日を後悔しない様にしようと思って生きてきていたが

こと父の最後に関しては

まだ後悔も疑問も決着も何一つ解決出来ないでいる。

来年もまたきっと此処に来る。

その頃には何か1つでも答えが出てくれているといいなと淡く期待した。

 

今日は暑くなると言われていたが

駆け抜けた風が涼しさすらも感じさせるくらいだった。